子犬の消化力は小さい。
だから、力が付くまで一日3回の食事が必要だった。

昼間、家には人間はいなくなる。

やむを得ずと言うより我が意を得たりと、りんとの同伴出勤をした、

勿論密かにだ。

そのために誰にも会わない早朝出勤だった。

駐車場の縁石を超えるのもままならない、でも遅れじと頑張った。

清掃のおばさんに挨拶し、ちょこんとエレベーターに乗り、嬉しげに見上げた。

数日後には勝手知ったりと部屋に案内してくれた。

帰りにはひと目を避けるため、職員が段ボール製リムジンを用意してくれたが、2週間も経たないうちに大型新車が必要になった。

恐がらずに乗っていたが、外に出れば飛び出して、みんなを笑顔にした。

一日2回の食事になるまで3週間余りこんな時間を過ごした。

今思えば、りんにとっても父さんにとっても、最高に幸せな時間だった。

必要のなくなった今も、同じような時間に来ている。

赤い腫れた目を見られたくないからという理由に変ってしまったが・・・。